本を読んで、しばらくのあいだ、賢くなったような気がしていた。
何かの考えがそこに繋がることもあったし、読んだ文章が頭に流れることもあった。
けれど、日が経ってみると、わたしのしていることにさほど変わりはなく、相変わらず人の気持ちはわからないし、バカなことを言ったりする。というか、バカなことしか言えない。
新たな視点を得るために本を読む。そのために人に会う。体験した人の方が強いのはわかっている。ただすべての体験はできない。毎日同じことを繰り返すのも、体験のひとつといえばひとつだ。それを悲しむ必要はないと思う。だから本を読むというのも理由のひとつかもしれない。
同じようで同じでないことも、もちろんわかっている。ただすべてが生産的で躍動的で自発的であるかと言われると困る。本を読んでいても、変わりがないように思えるときが、ある。
優しい人がつらい目にあう。のを、黙って見ている。不器用か器用かの差?
情報も、流れていく。産み出されたもの、捨てられていくものが、目の端を横切るだけで、なかなか飲み込めない。食べなくてもいいものを、選ぶのが下手だ。かけらが入ってくるだけ。
ただ、本を読んでピアノを弾いたりすると、信じられるようになる、気がする。受け入れられるものは、確実に増える。いい意味の、まあいっか。も増える。知識が増えると見えないものが信じられなくなるのではなくて、逆かもしれないと思う。
優しい人にかける言葉がみつからないのに、何のために本を読んでいるんだろう。
時間切れ。相手が死ぬまで続けなければいけないこともあるみたい。行ってまいる。